原田賢幸『昨日のこととは露知らず』

2015年1月31日(土)- 3月8日(日)
オープニングレセプション:1月31日(土)18:00 ~ 21:00
*この展覧会は、恵比寿映像祭2015の地域連携プログラムに参加しています。

・会期中は、月曜日 17~23時および金・土・日曜日 13~19時のオープンとなります。
・本展のオープニングレセプションを、初日の1月31日(土)18~21時に開催します。作家も在廊します。
・なお、初日も通常通り13時からオープンいたします。
展示風景
プレスリリース
PDF

waitingroomでは2015年1月31日(土)~3月8日(日)まで、原田賢幸個展『昨日のこととは露知らず』を開催いたします。当ギャラリーでは初の個展開催となる原田は、家電や家具、植物や食べ物などの日用品に様々な仕掛けを施すことによって、空間内を非日常空間に変化させるインスタレーション作品を発表している若手アーティストです。本展では、豆(食材)を中心に展開されるインスタレーションと、その制作のためのドローイングを数点展示します。なお同展覧会は、2015年2月27日~3月8日まで東京都写真美術館主催で開催される『恵比寿映像祭』の、地域連携プログラムに参加しています。


(左)『机の染みは昨日のものか。それとも。』2014年、インスタレーション、笠木靖之撮影、courtesy of Koganecho Bazaar 2014
(右)『今日も一日中、セミが暑苦しく鳴くのを聞いていた。夜、床に就いたがなかなか寝付けない。のどが渇いたので水を飲んだが同じことだった。』2010年、インスタレーション、第13回岡本太郎現代芸術賞展

作家・原田賢幸について

1978年東京都生まれ。2009年に武蔵野美術大学造形学部彫刻学科を卒業し、2011年に武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻彫刻コースを修了しました。日常に潜むなんてことのない瞬間や、普段は気にも留めないような現象を、ユーモアたっぷりな状況に変化させて提示することによって、通常だと忘れ去られてしまうような事柄に目を向けさせるきっかけを作ることが、制作の動機となっています。近年の展覧会として、2014年『黄金町バザール2014』(黄金町 / 神奈川)、2013年個展『三日前に一度きり』(GalleryAn Asukayama / 東京)、2012年グループ展『国立奥多摩美術館 開館記念展示~青梅ゆかりの名宝展』(国立奥多摩美術館 / 東京)、2011年個展『おそらく一寸前。あるいは一寸先の。』(Art Center Ongoing / 東京)が挙げられます。また、本展と同時開催で、Art Center Ongoingで個展『temper』が開催されます(会期:2015年2月18日~3月1日)。


(左)『おそらく一寸前。あるいは一寸先の。』2011年、インスタレーション(会場 Art Center Ongoing)
(右)『勇み足と停頓の間は、思いのほか。または期待外れの。もしくは想像通りの。』2012年、排水溝、スピーカー、水、音声、NEO公共(TERATOTERA / 東京)

さまざまな人種が混在したイメージは、まるで地球から見える星の色のよう

家電や家具に全く違った動きの要素を与え、そこに人の声を響かせることによって、空間全体を別の小宇宙へとワープさせた『黄金町バザール2014』での、賑やかなインスタレーションが記憶に新しい原田ですが、今回は小さな「豆」を素材として、非常に些細な動きの反復によって展示空間内にシュールな状況を作り出します。食材を保存するために私たちの誰もが日常的に使用しているプラスチックのタッパーの中には、様々な色の豆が保管されており、それが不意に床に落ちる。その繰り返しがひたすら起こる展示空間には、時間が経つにつれて、小豆(赤)・白豆・大豆(黄)・黒豆・青豆など、様々な色の豆が混在していきます。それは、「さまざまな肌の色や目や髪の毛、血の色のイメージ(人種の混在)と、地球から見える星の色のイメージを重ねて」おり、「身体から落ちてくる色々な種類の豆(血)が地面で混じり合うイメージと、色々な星が混在しているイメージ」であると作家は語ります。それは、私たちが生きるこの社会の縮図のようでもありながら、そこには善も悪も存在せず、ただ「あるがままの状況」として提示されます。

日常生活は繰り返しの連続で、その動作の大半は忘れ去られていくが・・・

「日常生活は繰り返しの連続である。寝るとか、洗濯するとか、風呂に入るとか、靴を履くとか。日々繰り返されるそういった動作の大半は、特に気に留められることもなく忘れ去られていく。
繰り返しのほとんどは衣食住に関することだけど、例えば食に絞って、食べ物を何かこぼしたり落としたら、拾いあげるか捨てるか、とにかく現場をすぐ元通りにしようとする。しかしその最中やその後、案外面白いことが起きているのかもって想像した。結果は目の前にある。(原田賢幸)」

大半は忘れ去られていく現象だが、それが普段とは少し違った状況の中で目の前に現れたら、日常の中の些細な繰り返しの連続が特別なものとして感じられるかもしれません。一体、この「繰り返し」には何の意味があるのか。特別なことではない「あるがままの状況」の中に隠された、見落としがちだが重要なファクターが、「作り上げられた繰り返し」を通して見えてくるかもしれません。
本展では、定期的に落ちる豆が保管されたタッパーが切りっぱなしの家具の上に置かれ、展示空間内に複数設置されるインスタレーション作品を中心に、制作の際に描かれたドローイングを5~7点程あわせて展示いたします。原田が作り上げる日常の中の小宇宙を、是非ともご高覧ください。


『ドローイング#01』2014年、ペン、水彩、紙、21 x 29.7 cm 『ドローイング#04』2014年、ペン、紙、21 x 29.7 cm

アーティスト
原田賢幸
Masayuki HARADA