waitingroomでは、11月12日(土)から12月17日(土)まで、杉原悠人個展『a friend of a friend』を開催いたします。
杉原は1985年愛知県生まれ、2007年3月名古屋造形芸術大学デザイン学科視覚伝達デザインコースを卒業後、名古屋を中心に数々の個展、グループ展に参加する等、精力的に活動を続けてきました。杉原にとって本展が東京での初個展となります。
杉原は、ドローイング、写真、映像、インスタレーションなど多様なメディアを用い、現代の日常生活に偏在する無意識下の様々な関係性(従属関係、支配関係など)を、私小説的な視点から軽やかに組み直し、見る側に再考を促す作品を制作しています。
人は現代を考えるとき、たくさんの人、文化、社会の構成要素を調べます。同様に、僕は「あなた」を知りたいとき、「あなた」に関する手がかりを集めます。その手がかりは、「あなた」と「僕」を跨ぐ文脈において、相互の繋がり、支配関係を持ち、「あなた」に近づく=理解するためのコードとして用意されます。
僕の制作は、その手がかりから最終的な理解へ到達する為の最も“単純な状態”を、自在にコラージュできるものとして捉え、再構築・可視化していく作業です。“単純な状態”とは、ゆるやかに繋がったいくつかの手がかりが、いつ、どのように、なにと比較され、関連付けされるかを拒否していないことです。そうした状態を表現するために今回、「友達の友達(a friend of a friend)」という言葉を選びました。展示自体をコラージュとして構成することで、作品に近づくことや、その場に居合わせるだけの状況を含めて、自分の意識が届くのではないかと考えています。
友達の友達は、何かのきっかけで家族になるかもしれませんし、一生会うことがないままかもしれません。でもそれはみんなが何となくわかっていることです。(杉原悠人)
今回は、東京では未発表の過去の映像作品を交えながら、新作のドローイング、写真、立体作品を中心に展示を構成していきます。
杉原の作品のひとつひとつは、愛知で過ごす彼の日常に溶け込んだ一見至極パーソナルで自己言及的なものに見えます。彼自身の飄々とした振る舞いや、本気なのか冗談なのか曖昧な作品の印象と相まって、強い主張は感じられないかもしれません。しかし、杉原の作品には、私たちが普段何気なく見過ごしている光景や感覚を、見る側をも巻き込みながら再考する状況を作り出す、穏やかだけれどもラディカルな問いかけがあるのではないでしょうか。
この機会に是非、ご高覧賜りますよう何卒よろしくお願い申し上げます。