waitingroomでは、2011年5月28日(土)から7月9日(土)まで、狩野哲郎個展『Anonymous Corridors ~あたらしい回廊~』を開催いたします。本展は、ミクストメディア・ドローイングシリーズ『新しい植物/New Plants』の新作群と、壁面の状態に呼応しながら制作するウォールドローイングシリーズ『Neotopia』、そしてテープや紐などの日用品を用いたインスタレーションの3つの要素で構成されます。また、本展に合わせて作家初のZine(ミニ画集)も発表・販売いたします。
作家・狩野哲郎について
狩野は、1980年宮城県仙台市生まれ、東京造形大学造形学部デザイン学科(環境デザイン/都市環境コース)卒業後、同大学院造形研究科(美術研究領域修士課程/絵画コース)を修了しました。多くのレジデンス・プログラム(現地滞在・制作プログラム)を通して、インスタレーション、ドローイング、写真などを使ったサイトスペシフィックな作品を制作してきました。近年では、SEOKSU ART PROJECT(韓国)や国際芸術センター青森(青森)など、国内外のレジデンス・プログラムに精力的に参加しています。
日用品をリミックスし、見えない自然界の関係性を表現
作品中に実際の動植物が登場する狩野の作品は、偶然性を孕みながら有機的に変化を続ける、その成長過程そのものが作品の一部となっています。代表的な作品として、植物の種子を展示空間に蒔き、その成長を見守る『発芽ー雑草/Weeds』(2004年~)や、網や紐、ホースなどの様々な日用品と植物で構成された空間に、鳥を放し飼いにするインスタレーション『それぞれの庭/Respective Garden』(2009年)、『自然の設計/Naturplan』(2010年)などがあります。人間の力ではコントロールできない他者(動植物)を作品中に含めることによって、全く違った立場の3者(動物・植物・作家)それぞれが反応する空間の機能や価値を探求し、自然の営みについて深い思考を巡らせることを作品テーマの1つとしています。
“あたらしい自然”を作る本展の試み
本展のタイトル『Anonymous Corridors~あたらしい回廊』は、生物学用語である“動物の通り道=緑の回廊/Green Corridors”(※)から来ており、動物たちが持っているであろう認識や感覚が、作家によって新たに別の形で提案されるということがテーマとなっています。「僕が提案するものの色や形や素材は、動物たちにとって見知らぬことが多いけれど、ひとたび彼/彼女らに提案された「もの」を回廊として扱い、認めたとき、その意味や存在価値が不確定であったオブジェクトやストラクチャーは、あたらしい自然になりうるのかもしれない」と作家自身が語るように、自然界における植物や動物、そして人間のあいだに存在する目に見えない関係性を観察し、そこに新たな状況を提案することによって生まれる「あたらしい自然=回廊」を、ドローイングやインスタレーション作品を通して表現しています。
狩野が創り出す“あたらしい回廊“を、この機会に是非、ご高覧賜りますよう何卒よろしくお願い申し上げます。
※ 緑の回廊:自然生態系の保護に関する生態学の用語であり、ヒトの生活圏によって分断された野生生物の生息地間をつなぎ、主に動物種の移動を可能とすることで生物多様性を確保するための植物群落や水域の連なりを指す。人工的に設けられたものを指す場合が多いが、同様の効果を持つものならば意図せず形成されたものに対しても用いられる。「水と緑の回廊」や「緑のコリドー」とも呼ばれる。(Wikipediaより)