小林健太 × 岸裕真トーク『人間とAI、そのあわいの知性』
10月11日(土)14:00-
https://waitingroom.jp/news/cobayashi-kishi-talk/
WAITINGROOM(東京)では、2025年9月13日(土)から10月12日(日)まで、自身にとっても3年ぶりとなる小林健太の個展『#copycat』を開催いたします。自身で撮影した写真をデジタル加工により大きく変化させた色鮮やかな写真作品シリーズで知られる小林は、都市イメージやデジタル環境における記憶の流動性の中で「真を写すとは何か?」という問いに迫ることを試みています。本展のタイトル「copycat」は「模倣者」を意味し、AIエージェント「MIRA」から小林に与えられたキャッチコピーでもあります。本展では、過去の作品データを生成AIに読み込ませ、そこに猫のイメージを重ね合わせた新シリーズがギャラリー空間に展開されます。本シリーズにおいて小林は、人間の支配からすり抜けていくAIと猫を「人間をまなざす他種」として位置づけます。現代におけるAIの発達やミームを通じた猫への愛好は、他種の視線を通じて人間という種の輪郭を確かめようとする、人間の潜在的な欲望として、また、そのようなまなざしを渇望する現代の人間性して捉え直されるのです。

『#copycat』ビジュアルイメージ
作家・小林健太について
1992年神奈川県生まれ。2015年に東京造形大学造形学部美術学科絵画専攻領域を卒業。現在は東京と湘南を拠点に活動中。90年代、家庭にあったMacintoshに触れ、プリクラやKID PIXなどのGUI環境で育った小林は、自身を「GUIネイティブ」と定義し、写真とデジタル編集を通じて「真を写すとは何か?」という問いを探求してきました。代表作《#smudge》シリーズでは、Photoshopの指先ツールで写真のピクセルを引き延ばし、「編集行為そのもの」を視覚表現として確立。この手法をCG、彫刻、映像、インスタレーションなど多様なメディアに拡張し、都市イメージやデジタル環境における記憶の流動性を探求しています。近年の展覧会に、2025年グループ展『AI / POST PHOTO』(Art Golden Gai、東京)、2023年グループ展『HYPER_IMAGE_SCAPE』(Boogie Woogie Art Museum [Ulsan Art Museum]、ウルサン、韓国)、2022年個展『EDGE』(アニエスベー ギャラリー ブティック、東京)、個展『THE PAST EXISTS』(三越コンテンポラリーギャラリー、東京)、個展『トーキョーデブリス』(WAITINGROOM、東京)、個展『Space-Time Continuum』(西武渋谷店、東京)、グループ展『COMING OF AGE』(フォンダシオン ルイ・ヴィトン、パリ、フランス)、2021年個展『#smudge』(ANB Tokyo、東京)、グループ展『I am here by WAITINGROOM』(CADAN有楽町、東京)、グループ展『Photo2021: The Truth』(Centre for Contemporary Photography、メルボルン、オーストラリア)、2020年個展『Live in Fluctuations』(Little Big Man Gallery、ロサンゼルス、アメリカ)、2019年個展『The Magician’s Nephew』(rin art association、群馬)、2018年グループ展『ハロー・ワールド ポスト・ヒューマン時代に向けて』(水戸芸術館、茨城)、2017年個展『自動車昆虫論/美とはなにか』(G/P gallery、東京)、2016年グループ展『GIVE ME YESTERDAY』(フォンダンツィーネ・プラダ・ミラン・オッサヴァトリオ、ミラノ、イタリア)などが挙げられます。2019年には、マーク・ウェストン率いるダンヒルの2020年春夏コレクションとのコラボレーション、またヴァージル・アブロー率いるルイ・ヴィトンのメンズ秋冬コレクション2019のキャンペーンイメージを手がけました。

『#copycat』ビジュアルイメージ
メディアによる次空間認識の拡張 ーマイブリッジ、富野由悠季、小林健太ー
吉田山(インディペンデント・キュレーター)
小林健太は、「写真とは何か」「真実とは何か」という根源的な問いを追求してきたアーティストである。カメラというメディアが客観的な現実を映し出すと信じられていた時代から、現在は写真加工やAI生成画像の台頭によって、虚実の境界が容易に曖昧となる時代が訪れ、さらには芥川龍之介の小説『藪の中』のように、登場人物がそれぞれの認識する真実を語るだけでなく、各々がビジュアライズする時代が到来している。
このように、生物学者のユクスキュルが提唱した「環世界(Umwelt)」の概念にも通じる多層的な人言社会の到来以前から、小林健太はテクノロジーと深く結びついた表現を探求してきており、彼の代表作である「#smudge」シリーズは、写真加工ソフトPhotoshopの指先ツール/smudgeを使用し、真実を編集するというデジタルツールのインターフェースを隠すことなく露呈させ、応答と行為によって生み出される視覚芸術を探求してきた。
そして、この個展「#copycat」で発表される新作では、AI画像生成サービス「Midjourney」を使用している。ブラウザでプロンプトを入力すると、差異のある4枚のイメージが同時に生成されるというインターフェースの仕様から、小林は、1つの指示から生まれた複数の差異を同一の作品個体であると提示し、AI時代での複製芸術のオルタナティブを示唆している。
ところで、AIがもたらす新しいインターフェースが表現の萌芽を生むように、19世紀にも同様の革新が起こっている。写真家エドワード・マイブリッジは、24台のカメラを設置して連続写真の撮影に成功し、肉眼では捉えきれない馬の運動を分解した。これにより馬の客観的な走行を白日の下にさらしたのです 。彼は、連続的に写真を投映する「ズープラクシスコープ」を発明し、後に映画の技術的先駆者となっていく。このように、マイブリッジの取り組みは人類に新たな「刻(とき)」の可視化をもたらす革新となっていった。
「刻が見える」とは、機動戦士ガンダムシリーズに登場する象徴的な台詞であるが、「ニュータイプ」と呼ばれる概念は、富野由悠季監督によって、単なる超能力者ではなく、言葉を超えた感覚や感情の共有を通じて相互理解を可能にする人類として定義されている。監督は違えど2025年の最新作「機動戦士Gundam GQuuuuuuX」内でもこのフレーズは継承され 、ニュータイプが持つ多次元的な時間認識を強く継承している。マイブリッジが物理的なカメラ技術で時間を分解することによって人類に新たな知覚を与えたように、テクノロジーが人間個人の認識を拡張し、多次元的な認識を可能にすることと相似しているといえるだろう。
私は、小林健太が仕掛けるこの挑戦を、マイブリッジが物理的な写真メディア、富野由悠季がSFアニメーションというメディアで探求した人類の認識拡張の系譜で捉えながら、AI時代における私たちの空間認識の再定義を促す芸術実践であると考えるに至った。

個展『トーキョーデブリス』(2022、WAITINGROOM、東京)
会場風景 撮影:山中慎太郎(Qsyum!)
作家略歴
1992 神奈川県生まれ
2015 東京造形大学 造形学部 美術学科 絵画専攻領域 卒業
現在東京と湘南を拠点に活動中
個展
2025
「#copycat」WAITINGROOM(東京)
2022
「EDGE」アニエスベー ギャラリー ブティック(東京)
「THE PAST EXISTS」日本橋三越本店 三越コンテンポラリーギャラリー(東京)
「トーキョーデブリス」WAITINGROOM(東京)
「Space-Time Continuum」西武渋谷店(東京)
2021
「#smudge」ANB Tokyo(東京)
2020
「CALENDAR」People(東京)
「Live in Fluctuations」Little Big Man Gallery(ロサンゼルス・アメリカ)
2019
「The Magician’s Nephew」rin art association(群馬)
「Kenta Cobayashi. Portraits」curated by Marcella Manni、Nonostante Marras, Vogue Photo Festival(ミラノ・イタリア)
「Photographic Universe」curated by Francesco Zanot、Fotografia Europea 2019(レッジョ・ネレミリア・イタリア)
「Rapid Eye Movement」IMA gallery(東京)
2017
「自動車昆虫論/美とはなにか」G/P gallery(東京)
2016
「#photo」G/P gallery(東京)
グループ展
2025
「AI / POST PHOTO」curated by 後藤繁雄、Art Golden Gai、NOX Gallery(東京)
2024
「Art Squiggle Yokohama 2024」山下ふ頭(横浜)
2023
「HYPER_IMAGE_SCAPE」Boogie Woogie Art Museum [Ulsan Art Museum](ウルサン、韓国)
「RE: FACTORY – Meet Your Art Festival 2023」w/ WAITINGROOM、寺田倉庫G1ビル、G3ビル(東京)
「EAST EAST_」w/ TAV Gallery、科学技術館(東京)
「elective affinities Part1」アニエスべー ギャラリー ブティック(東京)
2022
「Human Behaviour」金氏徹平 × 小林健太、Teppei Kaneuji × Kenta Cobayashi, RICOH ART GALLERY(東京)
「浅間国際フォトフェスティバル2022 – PHOTO MIYOTA」 MMoP(長野)
「COMING OF AGE」Fondation Louis Vuitton(パリ、フランス)
「Opening Reception」TAV GALLERY(東京)
「Structure of a Flow」Metronome(モデナ、イタリア)
「ART FAIR TOKYO 2022」w/ WAITINGROOM、東京国際フォーラム(東京)
「渋谷ファッションウィーク2022春」渋谷スクランブルスクエア(東京)
「SPRING SHOW」WAITINGROOM(東京)
2021
「I am here by WAITINGROOM」CADAN有楽町(東京)
「constellation#02」rin art association(群馬)
「まなざしのカタチ.02」WAITINGROOM(東京)
「新しい実存 – New Existentialism」Unexistence Gallery(オンライン)・HULIC &New UDAGAWA(東京)
「Photo 2021: The Truth」Franklin St East(メルボルン、オーストラリア)
2020
「SOURCE/ADIT: Studio TOKYO PHOTOGRAPHIC RESEARCH, ENCOUNTERS」ANB Tokyo(東京)
「Nature is Not your Household」(オンライン)
「constellation #01」rin art association(群馬)
2019
「来るべき世界:科学技術、AIと人間性」青山学院大学 青山キャンパス(東京)
「浅間国際フォトフェスティバル2019 – Photo MIYOTA」MMoP(長野)
「n e w f l e s h」curated by Efrem Zelony-Mindell、The Light Factory(ノースカロライナ、アメリカ)
「TENNOZ ART FESTIVAL 2019」天王洲エリア ふれあい橋橋梁(東京)
「#005 PHOTO Playground」Ginza Sony Park(東京)
「Arte Fiera 2019」Bologna Exhibition Center(ボローニャ、イタリア)
2018
「2018 SEOUL PHOTO FESTIVAL – BRAVE NEW WORLD」Buk Seoul Museum of Art(ソウル、韓国)
「Unseen Amsterdam 2018」(アムステルダム、オランダ)
「Breda Photo Festival」(ブレダ、オランダ)
「浅間国際フォトフェスティバル2018 – Photo MIYOTA」旧メルシャン軽井沢美術館 周辺エリア(長野)
「From My Point of View」Metronom(モデナ、イタリア)
「ハロー・ワールド ポスト・ヒューマン時代に向けて」水戸芸術館(茨城)
「Tokyo Before/After」The Japan Foundation(トロント、カナダ)
2017
「Forever Fornever」Bannister Gallery(プロビデンス、アメリカ)
「Unseen Amsterdam 2017」(アムステルダム、オランダ)
「Guangzhou Image Triennial 2017」Guangdong Museum of Art(広州、中国)
「FORMAT International Photography Festival」(ダービー、イギリス)
2016
「GIVE ME YESTERDAY」フォンダンツィーネ・プラダ・ミラン・オッサヴァトリオ(ミラノ、イタリア)
「asdfghjkl;’ x くぁwせdrftgyふじこlp」3331 Arts Chiyoda(東京)
「新しいルーブ・ゴールドバーグ・マシーン」KAYOKOYUKI(東京)、駒込倉庫(東京)
「New Material」Casemore Kirkeby(サンフランシスコ、アメリカ)
「Close to the Edge: New Photography from Japan」MIYAKO YOSHINAGA(ニューヨーク、アメリカ)
「NEW VISIONS #2」G/P gallery shinonome(東京)
2015
「Trans-Tokyo / Trans-Photo」Jimei×Arles East West Encounters International Photo Festival(厦門、中国)
「ゲシュタルトクライス―導かれる身体/越境する平面―」HAGISO(東京)
「The Devil May Care」Noorderlicht Photogallery(グローニンゲン、オランダ)
主なコラボレーション/キャンペーン
2022 Adidas ‘Kenta Cobayashi x adidas SPORTSWEAR’(コラボレーション)- 東京
ルイ・ヴィトン ‘LV DREAM’(ウォールペーパー)- パリ・フランス
SUMER SONIC 2022(メインゲート)- 東京
GINZA SIX(ウィンドウディスプレイ・キャンペーンイメージ)- 東京
西武渋谷店(ウィンドウディスプレイ・キャンペーンイメージ)- 東京
2021 TOYOTA Corolla Cross(テレビCM・キャンペーンイメージ)- 東京
2020 ダンヒル ‘Blue Capsule Collection’ by Mark Weston(コラボレーション) – ロンドン・イギリス
2019 ダンヒル 2020年春夏コレクション(コラボレーション) – ロンドン・イギリス
ルイ・ヴィトン メンズ秋冬コレクション2019(キャンペーンイメージ) – パリ・フランス
2018 Unseen Amsterdam 2018(キャンペーンイメージ) – アムステルダム・オランダ
アワード
2015 TOKYO FRONTLINE PHOTO AWARD 2015 グランプリ
主な出版物
『FROM CAMERA ROLL』, Newfave、2020年
『BROKEN MIRRORS drawing and splitting』, アートビートパブリッシャーズ supported by FUJIXEROX、2020年
『Everything_2』, Newfave、2020年
『Everything_1』, Newfave、2016年
パブリックコレクション
サンフランシスコアジア美術館
Tokyo Before/After – 国際交流基金
アマナコレクション
高橋コレクション

個展『#smudge』(2021、ANB Tokyo、東京)
会場風景 撮影:Taisuke Koyama