平子雄一 『Greening』

2017年9月16日(土)- 10月15日(日)
オープニングレセプション:9月16日(土)18:00-21:00

・会期中は、水・木・金・土 12~19時、日曜 12~18時のオープンとなります。(定休日:月火祝)
・本展のオープニングレセプションを、展覧会初日の9月16日(土)18~21時に開催します。作家も在廊いたします。
・なお、初日のレセプション前の時間帯も、通常通り12時から展覧会はオープンいたします。
展示風景
作品
地中楽園
2017
ミクストメディア, 850 x 550 x 10 mm
地中楽園
2017
ミクストメディア, 360 x 800 x 10 mm
自然マスク
2017
ミクストメディア, 330 x 480 x 860 mm
パンジー(母)
2017
ミクストメディア, 490 x 530 x 115 mm
山姫
2017
ミクストメディア, 450 x 560 x 200 mm
Greening
2017
ミクストメディア, サイズ可変
プレスリリース
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WAITINGROOM(東京)では2017年9月16日(土)から10月15日(日)まで、平子雄一個展『Greening』を開催いたします。当ギャラリーでは2年ぶりの個展開催となる平子は、植物と人間の共存についてとそこに浮かび上がる関係性に対する疑問をテーマに、ペインティングを中心にドローイング、彫刻、インスタレーション、サウンドパフォーマンスなど、メディアを横断して作品を制作している現代美術作家です。本展は、タイトルとなっている「Greening=緑化」をテーマに、「山女・鎮魂・システム」という3つのキーワードを選定し、彫刻とインスタレーションのみで構成するという、平子にとって新境地の発表となります。今までは、歴史、宗教、寓話、現代社会における「人と植物、都市と自然の関係」をリサーチするという姿勢で制作しており、個人としては一定の距離を保って捉えていましたが、本展では現代社会、特にホームセンター、生産緑地、プランター、公園、お花教室、多肉植物などといった生活圏における人と植物の関係性に着目し、より私的な視点でテーマを掘り下げることを念頭に制作に臨みました。今まではペインティングの中で展開されていた何層にも画面が重ねられた世界が、実際に立体化したようなインスタレーション作品をメインピースに、立体、もしくは半立体的要素を織り込んで制作された作品4-5点など、すべて新作で構成されます。


左:個展『Bark Feeder』展示風景、2015年 会場:第一生命ギャラリー(東京) 
右:《Wooden2》2015年、ミクストメディア、サイズ可変

作家・平子雄一について

1982年岡山県生まれ、東京都在住。2006年にイギリスのWimbledon College of Art, Fine Art, Painting学科を卒業。日本国内以外にも、コペンハーゲン、シンガポール、台湾、ロッテルダム、サンフランシスコなど、国外でも精力的に発表を続けています。近年の展覧会として、2016年個展『Our way to the Forest』(Fouladi Project、サンフランシスコ)、2015年個展『Grafted Tree』(WAITINGROOM、東京)、2014年個展『The Bark of Mind』(Galleri Christoffer Egelund、コペンハーゲン)、2012年個展『庭先メモリーズ:見えない森』(INAX GALLERY, 東京)が挙げられます。また、2009年『シェル美術賞』入選、2010年『トーキョーワンダーウォール』トーキョーワンダーウォール賞受賞、2013年『VOCA展』奨励賞受賞など、国内の主要公募展での活躍も目覚ましいです。

山女・鎮魂・システム(社会)

2003年にイギリスの美術館Tate Modernで展示されていた、オラファー・エリアソンの《Weather Project》という大型のインスタレーション作品を見た時に、太陽という存在を初めて身近に感じたと同時に、身近で当たり前の気候(太陽)への自身の概念が大きく変化したことが衝撃的だったと語る平子。自身が制作のテーマとして植物にこだわっているのには、その時に感じた衝撃が少なからず影響を与えているのではないかと平子は言います。誰もが共通して何らかの植物との接点や記憶があり、植物や自然は人間にとって身近な存在なはずなのに、実際はそこまでの関心は無く植物と人間の間には境界線が強く存在しており、ある種の共通認識のようになっていることへの疑問が常にあることから、その境界をなくした状況を見てみたいと思う気持ちが、平子の制作への全体のテーマとして通底して今まで続いています。それは、エリアソンが美術館という非日常の中に作り出した、人間にとって絶対的な存在である太陽という超日常を、逆説的に表現した《Weather Project》に重ねてる部分があるかもしれないと平子は言います。
本展への作品を制作するにあたって、平子は「山女・鎮魂・システム(社会)」という3つのキーワードを選定しました。「山女」は山奥に住む架空の妖怪で、現代社会での植物の扱いやあり様に嫌気や怒りを覚えドロップアウトした存在と仮定し、作家自身が持つ感情と重ねて作中に登場します。しかし、山に住みつつも社会へ戻りたいと言う欲求も同居しており、人が植物に対して行う行動の意味を考えるきっかけを与える存在としても機能しています。2つ目の「鎮魂」は、時折生じる植物や自然への懺悔の気持ちで、観賞目的や社会の都合で品種改良、生産された植物に対しての感情として登場します。社会が繁栄するために、シンプルで解りやすい自然へのポジティブなイメージを創造することは必要である気はするが、山女(作家)の様にこの状況に不快感を覚える存在が手前勝手に生まれてしまう、その両方への贖罪として表現します。3つ目の「システム(社会)」は、自然も社会に属することは免れないので、両者の妥協点を探すための受け皿としての社会と、そこに属することへのジレンマを共存させます。植物、自然関連のブーム(ファッション)を作り出す社会状況や、時折見せる伐採反対のような植物に対しての贖罪行為(そしてそれもブーム)。こういった社会に対して、どちらかというと植物の立場での山女的行動(反抗)と鎮魂的行動(慰め)を作家が行う(制作する)ことで、現状況をどのように変えることができるのか、もしくは出来ないのか、それを模索するための試みとして本展の作品を提示いたします。
地球温暖化や異常気象・自然災害の増加、ゴミ問題など、もはや環境問題について個人も無関心ではいられなくなった昨今。そんな時代の中でもなお、いまだ自然と人間の間に境界線が感じられる状況に対して、一石を投じること、考えるきっかけを与えることを平子は制作を通して続けてきました。今まで個人としては一定の距離を保ってこのテーマを扱ってきましたが、今回はより私的な視点で同テーマを掘り下げることによって、より強い作家の想いを伝えることのできる新境地の開拓となっております。是非ともご期待ください。


左:個展『Our way to the Forest』展示風景、2016年 会場:Fouladi Project(サンフランシスコ)
右:個展『Grafted Tree』展示風景、2015年 会場:WAITINGROOM(東京)撮影:松尾宇人

アーティスト
平子雄一
Yuichi HIRAKO