WAITINGROOM(東京)では、2026年7月18日(土)から8月9日(日)まで、特別展示:小林健太『PARALLAX//TOKYO』を開催いたします。本展は、アートコレクターであり横浜美術大学教授の宮津大輔氏とビクトリア国立美術館(メルボルン・オーストラリア)ヤング・アンバサダーのジャクソン・フォックス・ピカード氏による共同キュレーションによって構成されます。小林健太は、写真や映像、彫刻、インスタレーションなど多様なメディウムを横断しながら、都市イメージやデジタル環境における記憶の流動性を探求してきました。代表作《#smudge》シリーズでは、Photoshopの指先ツールによって写真のピクセルを引き延ばし、「編集行為そのもの」を視覚表現として提示しました。また、昨年WAITINGROOMで開催した個展『#copycat』では、都市風景を写した自身の過去作をAIに学習させ、特定の作品タイトルを想起させるプロンプトから生成されたイメージをレンチキュラー、映像、プリントとして発表するなど、「真を写すとは何か?」という問いを軸に新たな試みを続けています。本展では、小林の作品を所蔵する2人のコレクターがキュレーションを担い、新旧の作品を交差させながら、小林が多様なメディウムを通して展開してきた実践を再考します。

『PARALLAX//TOKYO』ビジュアルイメージ
小林健太(Kenta Cobayashi、1992年~)は、2015年東京造形大学造形学部 美術学科 絵画専攻領域を卒業。現在は、東京を拠点に活動。2013年に「MEGA MAX GIGA GREAT ZERO ZILLION NEBULA NOVA」(TANA Gallerybookshelf、東京)を含む3つのグループショウに参加、デビューを飾る。2016年「#photo」(G/P gallery、東京)で初個展を開催。以降、2016年「GIVE ME YESTERDAY」(プラダ財団 Osservatorio、ミラノ・イタリア)、2018年「ハローワールド ポスト・ヒューマン時代に向けて」(水戸芸術館現代美術ギャラリー、茨城)、2022年「COMING OF AGE」(フォンダシオン ルイ・ヴィトン、パリ・フランス)など注目の展覧会や、2018、19、22、25年には「浅間国際フォトフェスティバル」(御代田写真美術館ほか、長野)に参加する。他方、マーク・ウェストン率いるダンヒル2020年春夏コレクションでのコラボレーションや、故ヴァージル・アブローがディレクターを務めたルイ・ヴィトン2019年秋冬メンズコレクションのキャンペーンイメージを手掛けるなど多方面で活躍する。2025年の個展「#copycat」(WAITINGROOM、東京)では、過去の作品データを生成AIに読み込ませ、そこに猫のイメージを重ね合わせたシリーズで新境地を開いた。
写真について「写真という言葉自体の面白さ。他のアートのタイトルって、絵画であれば『絵を描く』彫刻は『彫って削る』とか、行為そのものを指しているわけだけど、写真って、『真実を写す』というふうに書くので、『じゃあ真実ってなんだ?それを写すってなんだ?』という問いが必然的に生まれてくるじゃないですか。だから自分は、ある種の禅問答のような問いとして、『写真』を受け取っています」1)と語る小林は、GUI(コンピュータ・グラフィックスとポインティング・デバイスなどを用いる操作体系)が生み出す筆勢によって、「従来≒手を加える前の写真」が捉えた情景に潜む核心=「生々しく生きているリアリティ」2)を露わにする。
こうした制作姿勢の根底には、幼少期にコンピュータと出会い、描くためではなく線を引く音やスタンプの偶然性に没頭した「遊び」がある。3)操作と結果のあいだのズレや遅延を愉楽として引き受けるその態度は、Photoshopの編集操作をリアルタイムに投影し、カーソルの軌跡を音響へ、指先のジェスチャーを全身運動へと拡張するパフォーマンス《Sound & Vision》《VISUALINERTIA》へと遊び広がっていった。日々進歩するデジタル・テクノロジーとの往還のなかで、この遊びと身体性は彼の表現手法を形づくっている。4)
今回の展示は、企業の求めに応じて制作した2点組コミッション・ワーク《wormhole 1 #smudge&wormhole 2 #smudge》(2022)や、「デジタルアウラ」展(会期:2026年2月20日~4月5日、ホテル アンテルーム 京都)に出品されたサンエムカラー独自の特殊印刷・光学技術レンチキュラーを用いた《Random Access Memories》(2026)など東京では初めて公開される作品に加え、自らの原点である渋谷の街(小林は、20代の一時期アーティスト・コレクティブでありシェアハウスでもある渋家(シブハウス)に在籍していた)をモチーフにした新旧作品で構成される。
また、本展で共同キュレーションを務めるのは、ビクトリア国立美術館(National Gallery of Victoria、以下NGV、メルボルン・オーストラリア)のヤング・アンバサダーであり、音楽やファッション、アートといったクリエイティブ領域で様々なプロジェクトを手掛けるジャクソン・フォックス・ピカード(アート・コレクター)と、現代アート作品のコレクションを通じて、経済及び社会と芸術の関係を実践的に研究している宮津大輔(アート・コレクター、横浜美術大学教授)の2人である。彼らはNGVの日本視察で出会い、意気投合して以来世代を超えた友情を育み、共にコレクションする小林健太の個展をWAITINGROOMの協力を得て、今般、開催するものである。
写真の有する機能が「かつて、ここで起こっていたことの記録」から、「今、ここで起こっていることの共有」へと変化しつつある現在、「記憶」と「記録」、「生成AI」と「人類の叡智」、「断片」と「全容」、「真実(リアル)」と「虚偽(フェイク)」といった二項間で流動化する諸諸相、そして「視差(Parallax)」に対し、「真を写すとは何か?」という根源的な問いを探求し続ける小林健太の現在位置に注目・期待したい。
1)「小林健太インタヴュー『家から都市へ、ディスプレイから実空間へ、拡張する意識』」『IMA ONLINE』、2019年4月30日、
https://imaonline.jp/articles/interview/20200430kenta-cobayashi/#page-3 (2026年6月15日閲覧)。
2)高山敦「写真表現を拡張するアーティスト・小林健太 その創作への想い」『TOKITON』、2021年4月13日、
https://tokion.jp/2021/04/13/kenta-cobayashi-genre-defying-photography/(2026年6月15日閲覧)。
3)「写真は『真』を写すのか?デジタル世代の写真家・小林健太が挑む写真表現の可能性」『テレ朝POST』、2020年10月16日、
https://post.tv-asahi.co.jp/post-132445/(2026年6月25日閲覧)。
同記事において小林は、「小さいときにマッキントッシュに入っていたキッドピクスでお絵かき遊びをしていた」「僕が作品作りで大切にしているもののひとつが”遊び”なんです」と述べている。
4)小林健太「#photo」(G/P gallery、2016年)ステイトメントでは、「僕たちはどこかにたどり着き続ける。遊びのように無意味かつ必死に。」と述べられている。

Left: Random Access Memories, 2026, UV print on acrylic, lenticular lens, 500 × 500 mm each, set of 9
Right: Untitled (I was here) #smudge #video, 2016, single channel video (5min. 29sec., loop)
1992 神奈川県生まれ
2015 東京造形大学 造形学部 美術学科 絵画専攻領域 卒業
現在東京を拠点に活動中
個展
2025
「#copycat」WAITINGROOM(東京)
2022
「EDGE」アニエスベー ギャラリー ブティック(東京)
「THE PAST EXISTS」日本橋三越本店 三越コンテンポラリーギャラリー(東京)
「トーキョーデブリス」WAITINGROOM(東京)
「Space-Time Continuum」西武渋谷店(東京)
2021
「#smudge」ANB Tokyo(東京)
2020
「CALENDAR」People(東京)
「Live in Fluctuations」Little Big Man Gallery(ロサンゼルス、アメリカ)
2019
「The Magician’s Nephew」rin art association(群馬)
「Kenta Cobayashi. Portraits」curated by Marcella Manni、Nonostante Marras, Vogue Photo Festival
(ミラノ、イタリア)
「Photographic Universe」curated by Francesco Zanot、Fotografia Europea 2019(レッジョ・ネレミリア、
イタリア)
「Rapid Eye Movement」IMA gallery(東京)
2017
「自動車昆虫論/美とはなにか」G/P gallery(東京)
2016
「#photo」G/P gallery(東京)
グループ展
2026
「The AI Art Magazine “SPATIAL INTELLIGENCE” screening program」Load Gallery(バルセロナ、スペイン)
「デジタルアウラ」ホテルアンテルーム京都(京都)
2025
「共鳴 ― Resonance」curated by 宮津大輔、Mikke Gallery(東京)
「やわらかな未来の考古学 ― Soft Archaeologies of the Future」CADAN大手町(東京)
「浅間国際フォトフェスティバル2025 – PHOTO MIYOTA」MMoP(長野)
平尾成志・小林健太「Singular Visions」WALL_alternative(東京)
「AI / POST PHOTO」curated by 後藤繁雄、Art Golden Gai、NOX Gallery(東京)
2024
「Art Squiggle Yokohama 2024」山下ふ頭(横浜)
2023
「HYPER_IMAGE_SCAPE」Boogie Woogie Art Museum [Ulsan Art Museum](ウルサン、韓国)
「RE: FACTORY – Meet Your Art Festival 2023」w/ WAITINGROOM、寺田倉庫G1ビル、G3ビル(東京)
「EAST EAST_」w/ TAV Gallery、科学技術館(東京)
「elective affinities Part1」アニエスべー ギャラリー ブティック(東京)
2022
金氏徹平・小林健太「Human Behaviour」RICOH ART GALLERY(東京)
「浅間国際フォトフェスティバル2022 – PHOTO MIYOTA」 MMoP(長野)
「COMING OF AGE」Fondation Louis Vuitton(パリ、フランス)
「Opening Reception」TAV GALLERY(東京)
「Structure of a Flow」Metronome(モデナ、イタリア)
「ART FAIR TOKYO 2022」w/ WAITINGROOM、東京国際フォーラム(東京)
「渋谷ファッションウィーク2022春」渋谷スクランブルスクエア(東京)
「SPRING SHOW」WAITINGROOM(東京)
2021
「I am here by WAITINGROOM」CADAN有楽町(東京)
「constellation#02」rin art association(群馬)
「まなざしのカタチ.02」WAITINGROOM(東京)
「新しい実存 – New Existentialism」Unexistence Gallery(オンライン)・HULIC &New UDAGAWA(東京)
「Photo 2021: The Truth」Franklin St East(メルボルン、オーストラリア)
2020
「SOURCE/ADIT: Studio TOKYO PHOTOGRAPHIC RESEARCH, ENCOUNTERS」ANB Tokyo(東京)
「Nature is Not your Household」(オンライン)
「constellation #01」rin art association(群馬)
2019
「来るべき世界:科学技術、AIと人間性」青山学院大学 青山キャンパス(東京)
「浅間国際フォトフェスティバル2019 – Photo MIYOTA」MMoP(長野)
「n e w f l e s h」curated by Efrem Zelony-Mindell、The Light Factory(ノースカロライナ、アメリカ)
「TENNOZ ART FESTIVAL 2019」天王洲エリア ふれあい橋橋梁(東京)
「#005 PHOTO Playground」Ginza Sony Park(東京)
「Arte Fiera 2019」Bologna Exhibition Center(ボローニャ、イタリア)
2018
「2018 SEOUL PHOTO FESTIVAL – BRAVE NEW WORLD」Buk Seoul Museum of Art(ソウル、韓国)
「Unseen Amsterdam 2018」(アムステルダム、オランダ)
「Breda Photo Festival」(ブレダ、オランダ)
「浅間国際フォトフェスティバル2018 – Photo MIYOTA」旧メルシャン軽井沢美術館 周辺エリア(長野)
「From My Point of View」Metronom(モデナ、イタリア)
「ハロー・ワールド ポスト・ヒューマン時代に向けて」水戸芸術館(茨城)
「Tokyo Before/After」The Japan Foundation(トロント、カナダ)
2017
「Forever Fornever」Bannister Gallery(プロビデンス、アメリカ)
「Unseen Amsterdam 2017」(アムステルダム、オランダ)
「Guangzhou Image Triennial 2017」Guangdong Museum of Art(広州、中国)
「FORMAT International Photography Festival」(ダービー、イギリス)
2016
「GIVE ME YESTERDAY」フォンダンツィーネ・プラダ・ミラン・オッサヴァトリオ(ミラノ、イタリア)
「asdfghjkl;’ x くぁwせdrftgyふじこlp」3331 Arts Chiyoda(東京)
「新しいルーブ・ゴールドバーグ・マシーン」KAYOKOYUKI(東京)、駒込倉庫(東京)
「New Material」Casemore Kirkeby(サンフランシスコ、アメリカ)
「Close to the Edge: New Photography from Japan」MIYAKO YOSHINAGA(ニューヨーク、アメリカ)
「NEW VISIONS #2」G/P gallery shinonome(東京)
2015
「Trans-Tokyo / Trans-Photo」Jimei×Arles East West Encounters International Photo Festival(厦門、中国)
「ゲシュタルトクライス―導かれる身体/越境する平面―」HAGISO(東京)
「The Devil May Care」Noorderlicht Photogallery(グローニンゲン、オランダ)
「hyper-materiality on photo (Photo London)」curated by 後藤繁雄、Somerset House(ロンドン、イギリス)
「hyper-materiality on photo」curated by 後藤繁雄、G/P gallery SHINONOME(東京)
「New Japanese Photography」curated by STAY ALONE and SPACE CADET、DOOMED GALLERY(ロンドン、イギリス)
NORIKO NAKAZATO・Psychic VR Lab・小林健太「ISLAND IS ISLANDS」curated by 後藤繁雄、G/P gallery SHINONOME(東京)
「トーキョーフロントライン フォトアワード ニューヴィジョンズ #1」G/P gallery SHINONOME(東京)
主なコラボレーション/キャンペーン
2022
Adidas ‘Kenta Cobayashi x adidas SPORTSWEAR’(コラボレーション)- 東京
ルイ・ヴィトン ‘LV DREAM’(ウォールペーパー)- パリ・フランス
SUMER SONIC 2022(メインゲート)- 東京
GINZA SIX(ウィンドウディスプレイ・キャンペーンイメージ)- 東京
西武渋谷店(ウィンドウディスプレイ・キャンペーンイメージ)- 東京
2021
TOYOTA Corolla Cross(テレビCM・キャンペーンイメージ)- 東京
2020
ダンヒル ‘Blue Capsule Collection’ by Mark Weston(コラボレーション)- ロンドン・イギリス
2019
ダンヒル 2020年春夏コレクション(コラボレーション) – ロンドン・イギリス
ルイ・ヴィトン メンズ秋冬コレクション2019(キャンペーンイメージ) – パリ・フランス
2018
Unseen Amsterdam 2018(キャンペーンイメージ) – アムステルダム・オランダ
アワード
2015 TOKYO FRONTLINE PHOTO AWARD 2015 グランプリ
主な出版物
『FROM CAMERA ROLL』, Newfave、2020年
『BROKEN MIRRORS drawing and splitting』, アートビートパブリッシャーズ supported by FUJIXEROX、
2020年
『Everything_2』, Newfave、2020年
『Everything_1』, Newfave、2016年
パブリックコレクション
サンフランシスコアジア美術館
Tokyo Before/After – 国際交流基金
アマナコレクション
高橋コレクション

Left: Solo Exhibition “#copycat” (2025, WAITINGROOM, Tokyo) Installation View, Photo by Shintaro Yamanaka (Qsyum!)
Right: Solo Exhibition “EDGE” (2022, agnès b. galerie boutique, Tokyo) Installation View, Photo by Fuyumi Murata