waitingroomでは2014年5月10日(土)~6月15(日)まで、加藤豊 個展『PEOPLE & BUILDING』を開催致します。2009年に当ギャラリーの記念すべき第1回目の展覧会で個展を開催して以来、waitingroomでの個展は5年ぶりの開催となります。加藤は都市風景やそこで生活する人々に焦点を当て、そのイメージを多角的な視点から考察した記録を作品に残しています。本展では、スケッチを通して作家が感じた、都市空間の中に存在する不可思議な現実を可視化、物体化したものを、平面と立体を組み合わせたインスタレーション形式で展開します。
1974年カナダ・トロント生まれ、現在東京で活動中。日本大学芸術学部ビジュアルコミュニケーション学科卒業。近年の展覧会として、2013年グループ展『LOVE TOKYO』(六本木ヒルズクラブ・東京)、2012年グループ展『LUMINE meets ART 2012』(ルミネ新宿店ルミネ1地下, 東京)、2009年個展『NIGHT SHIFT』(waitingroom・東京)、2006年個展『DRAW』(NO.12 Gallery・東京)などが挙げられます。もともとは平面で都市風景を描いていた加藤ですが、近年はその発表形態を彫刻作品へも展開し、表現の幅を広げてきています。定型サイズの木材を使用した積木型彫刻は、人々の位置関係と状況を追求したもので、見る視点を変えることによって全体の印象が大きく変化することが重要なコンセプトとなっています。
「都心を移動する時、大量のイメージに目を奪われる。ネオンと空き地と傷んだ髪、これは記録しなければならないとスケッチをとる。」そう語る加藤の目に映る都市風景には、そこにあるべき存在とそうでない存在、そしてその間にある立ち位置が確立されていないものたちで溢れています。それは、記録されなければ忘れ去られてしまうものばかりです。加藤の絵画や彫刻の特徴は、この「今」の風景や状況を、作品制作を通して残していくことに現れています。また、加藤は自身の作品について、「細部への注視を続けていくと個々のイメージが減少し、リズムと物質感が立ち上がる時間が訪れる」と述べており、その時間を「短い開放の空間」と表現しています。それはスケッチという、目の前の現実を一本の直線の積み重ねに変換していく行為が、描いているモチーフをそれ自体が持つイメージから解放している、ということに繋がるのではないでしょうか。
ファストフード店の一角に座りスケッチした風景や、様々な角度から捉えた人々の立体絵画には、現代社会に存在するあらゆる無機的・有機的なものを愛おしむ加藤の思いが詰まっています。この機会に是非ご高覧下さい。