毛利悠子 『Pleated Image』

2016年4月9日(土)- 5月15日(日)
オープニングレセプション:4月9日(土)18:00-21:00

・会期中は、月曜 17~23時および金・土・日曜 13~19時のオープンとなります。
・本展のオープニングレセプションを、初日の4月9日(土)18~21時に開催します。
・なお、初日も通常通り13時からオープンいたします。
展示風景
作品
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プレスリリース
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waitingroomでは2016年4月9日(土)から5月15日(日)まで、毛利悠子の当ギャラリーでは3年ぶりとなる個展『Pleated Image』を開催いたします。2月26日から3月27日までMinatomachi POTLUCK BUILDING(名古屋)で開催された展覧会『THE BEGINNINGS (or Open-Ended)』(第2期)で発表した、スキャナーとスキャニングされた画像を軸にした新作インスタレーションを、本展ではさらにブラッシュアップさせて展示いたします。オブジェと画像を通して、立体と平面の関係性に初めて取り組んだ意欲的な新作インスタレーションに、是非ご期待ください。

作家・毛利悠子について

1980年神奈川生まれ。東京在住。日用品やジャンクと機械部品を再構成した立体物を展示環境に寄り添わせることで、磁力や重力、光、温度など、目に見えない力をセンシングするインスタレーション作品を制作しています。2015年春より半年間、アジアン・カルチュラル・カウンシル(ACC)の招聘でニューヨークに滞在。同年、『日産アートアワード2015』でグランプリを受賞。近年の主な展覧会に『The Way Things Go』(Taipei Fine Arts Museum、台北、2016年)、『Mirror Mirror』(Kate Werble Gallery、ニューヨーク、2015年)、『ヨコハマトリエンナーレ2014』(横浜美術館、横浜、2014年)、『札幌国際芸術祭 2014』(清華亭/チ・カ・ホ、札幌、2014年)、『Unseen Existence』(Hong Kong Arts Centre、香港、2014年)、『おろち』(waitingroom、東京、2013年)、『サーカス』(東京都現代美術館ブルームバーグ・パヴィリオン、東京、2012年)など、国内外で精力的に発表しています。2016年夏から秋にかけて、ロンドンのヴィクトリア&アルバート・ミュージアム、次いでカムデン・アート・センターでの計4ヶ月にわたるレジデンスが決定しています。また、本展と同時期に開催される『六本木クロッシング2016:僕の身体、あなたの声』(森美術館・3月26日~7月10日)にも参加しています。


左:《大船フラワーセンター》2015 展覧会風景(Minatomachi POTLUCK BUILDING Photo:Ryohei Tomita)
右:《I/O – ある作曲家の部屋 -》ヨコハマトリエンナーレ2014 展覧会風景(Photo courtesy of Organizing Committee for Yokohama Triennale Photo: Yuichiro Tanaka)

「Pleated Image」=ひだ状の画像が明らかにする、作られた偶然の産物

リボン・毛ばたき・ロープ・蝶のおもちゃ・コイン・LEDライトなど、これまで毛利作品に登場してきたおなじみのオブジェたちが複数のスキャナー上に設置され、独自の装置によって動かされます。このオブジェの動きは、それぞれのスキャナーによって継続的にスキャニングされ、画像データがハードディスクに続々と保存されていきます。スキャナーが動いているかぎり半永久的に増えつづける像のあり方は、直線的に時間が進む動画(ムービー)とは違ったかたちで、運動や時間を含むものとなるでしょう。ひとつのオブジェから運動や時間のさまざまな様相を生み出すこのインスタレーション装置を、作家は、無数のひだが折り重なっていく像=「Pleated Image」(“ひだ状のイメージ”)と名づけました(それは複数のイメージではなく、単一のイメージの異なる様相であるため、「Image」は単数形で表されます)。
このインスタレーション装置から日々生成される膨大な量におよぶ画像データは、一見して明らかに、エティエンヌ=ジュール・マレーの「クロノフォトグラフィ」、あるいはモホリ=ナジ・ラースローやマン・レイの「フォトグラム(レイヨグラム)」などを美術史的なリファレンスとしていることがわかります。これまでメカニカルなインスタレーションを発表してきた毛利が初めて世に問うヴィジュアル・イメージ作品は、視覚的実験の継承であったようです。

また毛利は、アレ・ブレ・ボケ、あるいはデジタル・エラーといったものがふんだんに含まれるこれらの画像データを、“写るはずのないものが写し出される”という観点から「心霊写真」に喩えます。19世紀後半から20世紀にかけて一大ブームを巻き起こした「心霊写真」は、そこに写り込むあいまいな像に対して、観る者が「思い」を投映することで成立しますが、毛利の作品もまさに、人工的に動く機械に対して鑑賞者の想像力がアクセスすることで、生きたアートとして成立する──作家はそう考えているのかもしれません。「モノやコトがぶれたり揺らいだりするあいまいな状態を生成させて、人々の想像力にアクセスする。それを美術的にアプローチすることに興味がある」と毛利は語っています。
毛利は、機械の誤作動(エラー)や光や風、磁力といった自然現象が作る「ぶれ」や「揺らぎ」に興味を持ち、さまざまな作品を制作してまいりました。目に見えない力を可視化するインスタレーションに身を置いた鑑賞者は、そこに、何者かが存在するかのような“気配”を感じたことでしょう。今回の作品《Pleated Image》の膨大な「ひだ状のイメージ」には、目には見えない偶然の産物が写されているかもしれません。これまでの毛利作品に存在していた“気配”は今回、「ヴィジュアル・イメージ」として私たちの前に提示されるのです。
『日産アートアワード2015』でグランプリを獲得した新作《モレモレ:与えられた落水》に引き続き、毛利が意欲的な新作に挑みます。是非ともご高覧いただけますよう、よろしくお願い致します。

会期中に会場でスキャニングされている画像は、以下のFlickrサイトにリアルタイムで掲載されていきます。→https://www.flickr.com/photos/139876404@N07


左:《Urban Mining》2015 展覧会風景(SPIRAL, Courtesy of SPIRAL/Wacoal Art Center Photo: Nobutada Omote)
右:《モレモレ:与えられた落水 #1-3》2015 展覧会風景(日産アートアワード2015, 撮影:木奥惠三)

アーティスト
毛利悠子
Yuko MOHRI