waitingroomでは2013年5月25日(土)~6月30日(日)まで、辻可愛のwaitingroomでの初個展『階段下の声/あの床の冷たさ』を開催いたします。日常生活の中のささいな瞬間に感じる、身の回りの世界の「奇妙さ」「不可思議さ」をテーマにした、新作のペインティングとドローイング作品を発表します。
1982年長崎県生まれ、東京都在住。2006年に東京工芸大学芸術学部デザイン学科を卒業。2009年から2012年まで、岡崎乾二郎氏がディレクターを勤める四谷アート・ステュディウムに在籍。白昼夢のような、物語のあるワンシーンを切り取ったような作風が特徴。近年の展覧会に、2010年グループ展『between pieces』(GALLERY OBJECTIVE CORRELATIVE/東京)、2011年グループ展『窓と物語』(waitingroom/東京)、2013年個展『双眼鏡で隣に座る』(GALLERY OBJECTIVE CORRELATIVE/東京)が挙げられます。
「たとえば公園で花見をしている時に…」と辻は語ります。「いくつかのグループが点在し、花を眺める人や様々なしゃべり声が聞こえる。ふいに少しだけ大きな声が聞こえ、それがとたんに怒鳴り声に変わる。視線を移すと桜を眺めていたカップルの女性がうつむいていて、隣にいた男性はいない。一変した状況の中で、さっきまであったのどかな風景の細部に、何か見えていないことがあったのかもしれないと気付く。もしかしたら花を眺めるカップルの表情は、なにか曇った、はりつめたものだったのかもしれない」と。
アメリカのTVドラマ「ツインピークス(1990-1991年)*1」では、何もない片田舎ののどかな暮らしの中で、1人の女子高生の死体が見つかることによってあぶり出される、周囲の様々な人間関係やその裏側の闇が描かれていました。
普段は気がつかない物事が、とある現象が起こることによって明るみになることがあります。それは、見えていない物事や状況の細部から個別の出来事が立ち上がった瞬間であり、その瞬間を捉えたいと辻は言います。自分の記憶を紐解いていった中で、ふと思い出された風景の中に潜む「奇妙さ」や「不可思議さ」を画面上に表現することによって、観る者それぞれの記憶の中の風景に問いかけます。果たしてその時に見えていたものがすべてだったのだろうかと。
辻にとってwaitingroomでの初個展となる本展では、大小15点ほどのペインティング作品とドローイング作品を発表します。この機会に是非ご高覧下さい。
注釈)*1:「ツイン・ピークス」は、1990年から1991年にかけてアメリカ合衆国にて放映されたテレビドラマおよび1992年に公開された映画。製作総指揮はデイヴィッド・リンチとマーク・フロスト。