高田冬彦『Cut Pieces』

2023年9月9日(土)- 10月8日(日)
・営業日:水~土 12:00~19:00 / 日 12:00~17:00
・定休日:月・火・祝日
・オープニングレセプション:9月9日(土)18:00-20:00 *作家が在廊いたします
展示風景
作品
Cut Suits
2023
シングルチャンネルビデオ、サウンド、 6分12秒
The Butterfly Dream
2022
シングルチャンネルビデオ、サウンド、 4分37秒
Dangling Training
2021
シングルチャンネルビデオ、サウンド、 1分36秒
Sketch for Cut Suits #01
2023
紙に鉛筆と色鉛筆、 278 x 207 mm
Sketch for The Butterfly Dream #02
2022
紙に鉛筆と色鉛筆、 168 x 295 mm
Sketch for The Butterfly Dream #03
2023
紙に鉛筆と色鉛筆、 207 x 268 mm
プレスリリース
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WAITINGROOM(東京)では、2023年9月9日(土)から10月8日(日)まで、高田冬彦の個展『Cut Pieces』を開催いたします。
高田は、おとぎ話や神話を下敷きに、ジェンダー、セクシュアリティ、孤独、ナルシシズムやトラウマといったテーマを横断的に扱った映像作品を制作しています。本展では、最新作『Cut Suits』に加え、昨年末アメリカで開催されたアートフェア「NADA Miami 2022」で話題を集めた『The Butterfly Dream』を日本初披露するほか、近作の『Dangling Training』も発表いたします。
近年の高田は、男性身体をモチーフにしつつ、そのイメージを遊戯的な発想で揺るがせていくような作品群に取り組んでいますが、今回の個展でもそうした興味を継続・展開させています。特に、本展のための最新作『Cut Suits』は、複数の男性モデルが演じるパフォーマンスをとらえた作品で、高田のアイデアは6名の演者の手に委ねられており、それを規模の大きな撮影手法で記録しています。また、実際に使用した小道具の展示に加え、作中のイメージが展示空間まで広がったようなインスタレーション的表現など、より空間的、彫刻的なアプローチに挑戦いたします。
 

『Cut Suits』2023年(ビデオスチル)

作家・高田冬彦について
1987年広島県生まれ。2017年東京藝術大学大学院美術研究科油画研究領域 博士後期過程 修了。現在は千葉県を拠点に活動中。近年の主な展覧会に、2022年グループ展『Storymakers in Contemporary Japanese Art』(The Japan Foundation Sydney/シドニー、オーストラリア)、2021年個展『LOVE PHANTOM 2』(WAITINGROOM/東京)、グループ展『Lost in Translation』(京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA/京都)、2020年グループ展『When It Waxes and Wanes』(VBKÖ/ウィーン、オーストリア)、2019年個展『MAMスクリーン011: 高田冬彦』(森美術館/東京)、2018年個展『Dream Catcher』(Alternative Space CORE/広島)、2017年個展『LOVE PHANTOM』(Art Center Ongoing/東京)、2016年個展『STORYTELLING』(児玉画廊/東京)、グループ展『MOTアニュアル2016 キセイノセイキ』(東京都現代美術館/東京)などが挙げられます。
 

『The Butterfly Dream』2022年(ビデオスチル)

布の裂け目から覗くもの
青年が木陰で昼寝をしていると、夢の中に、蝶とハサミのキメラが現れる。蝶は青年の周りを飛び廻り、羽ばたくと同時にハサミをチョキチョキ動かして、青年の服を切り裂いていく––中国の故事『胡蝶の夢』を思わせる高田冬彦の『The Butterfly Dream』では、オノ・ヨーコのパフォーマンス作品『Cut Piece』が参照されています。集まった観客が、一人ずつ順に作家の着ている衣服をハサミで切り取っていくというこの作品は、パフォーマンス・アート史において「見る/見られる」欲望や、能動/受動の問題を問いかけた最初期の例として、よく知られているものです。
『The Butterfly Dream』で描かれた、男性を被写体とした幻想的な物語は、最新作『Cut Suits』にも引き継がれています。サラリーマン風の格好をした男性たちが、はさみを手に互いのスーツやシャツを楽しげに切り刻む本作は、スーツ姿の男性をエロティックにまなざすと同時に、日本的な「男らしさ」という社会的規範からの解放を示唆しているかのようです。
「私の作品のテーマは、『見ること/見られること』に関する問いから始まっている」と高田本人が言うように、快楽と暴力性の両面を持つ「見る/見られる」ことへの欲望は、高田作品の根底にあると言えます。本展で発表される作中にも、「(ハサミで)切る/切られる」といった受動と能動、快楽と暴力性、サディズムとマゾヒズムなど、相反するかのように思われる要素が常に背中合わせに存在しています。高田作品を観るとき、どことない居心地の悪さを感じつつも、どうしようもなく魅了されてしまう感覚をおぼえるのは、まるで裂けた布の「向こう側」を覗いてしまった時のように、快楽や狂気といった人間の持つ隠された部分に気づくと同時に、それらが自分の中にも確かにあるということに、気づいてしまうからなのかもしれません。
これまでの展示や上映の機会においては、映像作品のみの発表がほとんどであり、絵コンテ的な要素を持つドローイングや、作中に実際に登場するプロップ自体の彫刻的魅力についてはあまり注目されて来ませんでした。本展で高田は、それらの展示に加え、複数台のモニターを使用した彫刻的な表現や、作中のイメージが展示空間まで広がったような映像インスタレーション的表現など、会場を空間的に使用したプレゼンテーションに挑みます。WAITINGROOMでは2回目の開催となる高田冬彦の、作家としても2年ぶりの新作個展にぜひご期待ください。
 

『Dangling Training』2021年(ビデオスチル)

アーティスト
高田冬彦
Fuyuhiko TAKATA