グループ展 doubles2『間(のめ)』キュレーター x アーティスト:居原田遥 x 手塚太加丸 & 大下裕司 x 結城幸司

2016年9月10日(土)- 10月9日(日)
オープニングレセプション:9月10日(土)18:00-21:00

・会期中は、月曜 17~23時、木・金・土 12~19時、日曜 12~18時のオープンとなります。
・本展のオープニングレセプションを、初日の9月10日(土)18~21時に開催します。
・なお、初日も通常通り12時からオープンいたします。
展示風景
作品
手塚太加丸 山について考える - 気を切って並べる-
2016
杉, 檜, サイズ可変
結城幸司 オホーツクの間(のめ)
2016
布にインク, 1200 x 1880 mm
手塚太加丸 山について考える - 石を動かして積む -
2016
シングルチャンネルビデオ, サウンド, 10分
結城幸司 流木のカムイ
2009
紙にインク(木版画), 305 x 1000 mm
プレスリリース
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WAITINGROOMでは、2016年9月10日(土)から10月9日(日)まで、今後の活躍が期待される若手キュレーターを紹介するシリーズ「doubles(ダブルス)」の第2回目を開催します。第1回目キュレーターの趙純恵と長谷川新からバトンを受け取り、沖縄出身の居原田遥と、横浜出身の大下裕司が共同キュレーション「間(のめ)」を企画しました。本展は、2人展・グループ展という形式ではなく、キュレーターとアーティストの4名が対話することによって、1つの展覧会を完成させる試みです。今回、居原田は手塚太加丸(1990年屋久島出身)を、大下は結城幸司(1964年釧路出身)をそれぞれ選出しました。

南と北、都市と地方、中央と周縁、伝統と革新。
こうした現代社会における二項対立は、私たちに立場の選択を強いることがあります。例えば、書類の提出時に署名を求められるとき、はたまた与野党議員選挙の投票。特定の立場を選ぶことを余儀なくされるが故に、双方のあいだで言葉を失い、途方に暮れることも少なくありません。
あらゆる問いを前に「何者であるのか」という答えを求められたとき、自身の生い立ちや文脈から考えようとすると、両端のいずれかにむりやり追いやられる。それは、近代という歴史が、さまざまな問題を抱えたまま、置き去りにしてきたことの代償のように思えます。
しかし、「あいだ」に立ち、そこにまなざしを置くことができるとしたら、両端にある距離すらも、距離のまま「見る」ことが出来るとしたら。私たちはそうした「端」を超え、異なる視座を手にすることが出来るのかもしれません。
展覧会タイトルとした「間(のめ)」(英題:in between gaze)は、「あいだのめ」と読みます。アーティストたちの対話により生まれたこのタイトルは、「間」という字の「日」を「目」に置き換えて書かれた創作文字です。それは、彼らの制作に深く結びついた意味を持っています。対抗のあいだに視座を置き、それをそのまま見るという展示を、ご覧頂ければ幸いです。

今日における「アーティスト」とは、世界をどのように見て、社会と環境を読み解き、そのなかで自身の生活を築きながら、モノを作り、芸術活動とするのでしょうか。
手塚太加丸は屋久島で生まれ育ちました。大学を卒業した後、手塚は沖縄県にて、施工と内装を仕事としながら、仲間たちと共同生活を営んでいます。また年に一度、自然豊かな故郷の屋久島・白川山に「かえり」、生活を捉え直しながら、「いえ」という生活空間を作るプロジェクト、「しらこがえり」を続けています。また時折、日本各地を移動しつつ、あらゆる空間の内装を手がけています。これがアーティスト、手塚の生活であり、営みです。沖縄や屋久島、様々な場所を行き来しながら、そこに居る人々にあわせ、土地に向き合い、作り続けています。
結城幸司は釧路出身、札幌在住の版画家、アーティストでアイヌ民族の出身です。日本の先住民族であるアイヌの世界観を、独特の「語り」を持って版画という形で表現します。結城は民族解放運動の旗手であった父に反発し、かつてはアイヌ民族ということを避けて暮らしていましたが、アイヌの伝統的な丸木舟の復元に立ち会うことが転機となり、活動を開始します。彼は、自分の関わったその「舟」が博物館の展示品として制作されたために、ただの一度も海に出ることなく収蔵された事にショックを受け、自身のエスニック・アイデンティティと向き合うことになったと言います。
アイヌの「伝統」には本来、版画も、ヴィジュアルアートとしての絵画もありません。故に彼の活動は伝統もしくは正当性を強く志向する他のアイヌからも批判されてきました。では一体、彼の活動とは何か。「しまわれる舟」とは別の在り方で、結城自身の作家としてのアイデンティティと、アイヌとしてのそれが、版木に刻まれています。
本展では手塚太加丸、結城幸司ともに新作を発表いたします。また、キュレーターの居原田遥と大下裕司による本展についてのテキストもあわせて会場でお読み頂ける予定です。今回のdoubles 2でしか見ることのできない4人の組み合わせの展覧会を、この機会に是非ご高覧下さい。

キュレーター&アーティスト経歴

キュレーター | 居原田遥(いはらだ・はるか)
1991年沖縄県生まれ。東京藝術大学音楽文化学修了。アジアのアート・アクティビズムやコレクティビズム、戦後沖縄美術を関心軸におき、展覧会やプロジェクトのコーディネート、美術分野に留まらず、幅広いジャンルのイベント企画を行う。また2016年よりオルタナティブ・スペース「特火点 – tochka」を運営。これまでの主な活動に、「寄り道キャラバンプロジェクト」企画(アジア7都市、 2015年)、川田淳個展「終わらない過去」企画 (東京、2015年)、Cultural Typhoon 2016事務局長。

アーティスト | 手塚太加丸 (てづか・たかまる)
1990年屋久島生まれ。現在は、屋久島と沖縄の2つの場所を行き来しながら活動を展開している。主な活動として、故郷である屋久島の白川山にかえり続けるプロジェクト「しらこがえり」を2013年より展開。毎年「しらこがえり」し、会期中には関連した展覧会や上映会などを行う。また2014年には沖縄で共同制作空間「 BARRACK」を立ち上げ、企画・運営を行っている。


左:手塚太加丸《土を掘って土地を見て場になる》2016年、「私戦と風景」展(丸木美術館)
右:手塚太加丸《しらこがえり》2013年夏、屋久島

キュレーター | 大下裕司(おおした・ゆうじ)
1987年横浜生まれ。慶應義塾大学文学部美学美術史学専攻卒業、同大学院政策・メディア研究科中退。これまでに札幌国際芸術祭2014コーディネーター、東京アートミーティングVI(東京都現代美術館)学芸アシスタントなどを経験。主な企画に「川村元紀|最高速でぶれる崖」(札幌、CAI02、2014)、「交感と交換/ここはどこか、あるいは何か」(札幌、越山計画ほか、2013)など。

アーティスト | 結城幸司(ゆうき・こうじ)
1964年釧路出身、札幌在住。版画家。2000年にアイヌ・アート・プロジェクトを結成。2008年、洞爺湖サミットに際し実施された「先住民族サミット・アイヌモシリ2008」にて同実行委員会事務局長。2010年よりギャラリーモーツアルト(東京)にて毎年個展を開催している。2011年にはノーベル文学賞受賞者であるフランスの小説家ジャン=マリ・ギュスターヴ・ル・クレジオの招待により、ルーブル美術館で行われたイベント「ルーブルの噂/世界の噂」にてストーリーテリングを披露した。


左:映画「七五郎沢の狐」2014年、13分、(c)tane project / Koji Yuki
右:結城幸司《熊色の夜に想うこと》2012年、紙、インク

アーティスト
手塚太加丸
Takamaru TETSUKA
結城幸司
Koji YUKI