土取郁香『わたしを抱いてねむる・凪』

2023年1月28日(土)- 2月26日(日)
・営業日:水~土 12:00~19:00 / 日 12:00~17:00
・定休日:月・火・祝日
・オープニングレセプション:1月28日(土)18:00-20:00 *作家が在廊します
展示風景
作品
I and You(わたしを抱いてねむる・凪)
2023
キャンバスに油彩とスプレー, 1940 x 1303 mm
I and You (overlap)
2022
キャンバスに油彩とスプレー, 1620 × 1120 mm
I and You (Her devotion)
2023
キャンバスに油彩、スプレー、アクリル 1455 x 2063 mm (set of 3)
I and You(“あたし、湖を見ているの、それとも眸を見ているの?”)
2022
キャンバスに油彩とスプレー, 910 × 727 mm
I and You (from shadow, or mirror)
2023
キャンバスに油彩, 410 × 318 mm
I and You (from shadow, or mirror)
2023
キャンバスに油彩, 910 × 727 mm
I and You (“Face, I know at last from whence you came!”)
2022
キャンバスに油彩, 410 × 318 mm
a scene (biloba)
2023
キャンバスに油彩, 273× 220 mm
a scene (pillow)
2023
キャンバスに油彩, 180 × 140 mm
untitled202204 (“Face, I know at last from whence you came!”)
2022
紙に鉛筆, 333 × 242 mm
untitled20220911
2022
紙に水彩、スプレー、鉛筆, 790 x 545 mm
untitled20211125
2022
紙に水彩、スプレー、色鉛筆, 790 x 545 mm
untitled20220920
2022
キャンバスに油彩, 477 x 392 mm
untitled20221007
2022
紙に水彩、スプレー、色鉛筆, 410 x 315 mm
untitled20221227
2022
紙に水彩, 410 x 315 mm
untitled20221227
2022
紙に水彩とクレヨン, 410 x 315 mm
untitled20220909
2022
紙に水彩、スプレー、色鉛筆,  242 x 330 mm
プレスリリース
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WAITINGROOM(東京)では、2023年1月28日(土)から2月26日(日)まで、土取郁香の当ギャラリーでは3年ぶり2回目となる個展『わたしを抱いてねむる・凪』を開催いたします。
土取は、2人の人物を描いた《I and You》、風景の中から色やかたちなどの要素を抽出した《a scene》の2つのシリーズの制作を通して、特定の対象をかけがえなく思うことや、人と人、自分と自分などの間にある関係について考えをめぐらせてきました。本展は、近年の《I and You》シリーズの変遷を地続きに見せるような新作個展となります。同シリーズでは「わたしとあなた」という別個の2者が描かれてきましたが、近年は、2者が融け合い、その線引きが曖昧になるような展開を見せています。描かれた2者は「わたしとあなた」に限らず、「わたしとわたし」や「わたしと、わたしの思い込みの像を投影したあなた」、そして、絵画の歴史においても重要な要素である「わたしとその影」などの可能性を持ち始めました。その変遷のきっかけとなったドローイング作品を中心に、《I and You》シリーズの現在地を表すような新作ペインティング作品8点前後を、本展にて発表いたします。


I and You (overlap), 2022, キャンバスに油彩とスプレー, 1620×1120mm

作家・土取郁香について

1995年兵庫県生まれ。2020年に京都芸術大学(旧:京都造形芸術大学)大学院・美術工芸領域・修士課程を修了。現在は京都を拠点に活動中。近年の展覧会に、2022年個展『Blind Spot』(COHJU contemporary art、京都)、グループ展『或る絵肌 – 物語るマチエール』(日本橋三越本店美術サロン、東京)、グループ展『天人花展』(西武渋谷店美術画廊、東京)、2021年グループ展『猫とマチエール』(MtK Contemporary Art、京都)、グループ展『Kyoto Perspective』(ANB Tokyo、東京)、グループ展『Kyoto Art for Tomorrow 2021-京都府先鋭選抜展-』(京都文化博物館、京都)、2020年個展『骨と皮(火を灯す・薔薇をみつけて来なければ)』(WAITINGROOM、東京)、グループ展『-Inside the Collector’s Vault, vol.1- 解き放たれたコレクション展』(WHAT MUSEUM、東京)、グループ展『SUBJECT』(アンテルーム京都、京都)、グループ展『A-Lab Artist Gate 2020』(A-Labあまらぶアートラボ、兵庫)などが挙げられます。

わたしはわたしを受け入れる=わたしを抱いてねむる・凪

土取郁香の絵画作品シリーズ《I and You》では、抽象化された図像の中に、密接した2人の人物の姿を見つけることができます。その制作方法は、抱きしめたり、寄り添ったりするようなポーズを別々のモデル1人ずつにとってもらい、それぞれの図像をキャンバス上で組み合わせて描き出すというものです。モチーフとなるのは実在の人物だけではなく、映画や文学、少女マンガから影響を受けているものも多くあります。
シリーズを通して土取は、親密な距離関係にある別個の2者を描いてきました。しかし近年、1枚のドローイングを描いたことをきっかけに、自身が描きたいものは、「わたしとあなた」という2者間の「親愛」にはとどまらないのではないか、という考えが生まれたと土取は言います。きっかけとなった白黒の小さな1枚のドローイングを見ると、影のような黒い部分の中に、90度回転した顔のようなものがぼんやりと浮かんでいるのがわかります。そのすぐ左横に見える白い部分は、顔のようなものと接しているようですが、もう1人の人物なのか、見えている顔の持ち主の一部なのか断定しきれません。両者の線引きは曖昧で、2つの存在が融解しているようです。

戦場へ旅立つ恋人の影の輪郭をなぞったことから絵画は生まれたという神話は、絵画の起源としてよく語られます。似顔絵ではなく影をなぞったものを壁に残し、それを身代わりや分身のようなものとして不在の恋人を思ったというこの神話は、絵画と影、そして親密な2者というモチーフの間に深い示唆を与えます。
そして、誰かに寄り添ったり、抱きしめたりといった親密な他者との触れ合いは、皮膚を通して行われます。前回の個展のタイトル『骨と皮(火を灯す・薔薇をみつけて来なければ)』でキャンバスの構造を「骨と皮=骨組みと皮膚」に見立てていた部分は今回の個展へも引き継がれ、より滲みの表現が出やすい素材のキャンバスをも使用するようになったことで、多様な「皮膚」の絵肌を作り出しています。またモチーフ同士がさらに融解していくような表現へと展開し、2者の関係性の中に確かにある、不穏さや複雑さをも含もうとしているかのようです。と同時に、他者と自己の間にはっきりとした境界線が存在することも、常に意識して制作していると土取は語ります。
描かれた2者は「わたしとあなた」ではなく、「わたしとわたし」、「わたしとわたしの影」なのかもしれない。また、親密さを感じる相手は、自分の記憶や思い込みに由来する「わたしの思い込みの像を投影したあなた」なのかもしれない。自己や他者に対する好ましい面や明るい部分だけでなく、傷や影となるような多面的な部分も受け入れることができるだろうか。そういった、親愛や親密さについて描きながら考え、深まり続ける思考が今回の展示作品やタイトルには込められています。
1枚のドローイングをきっかけとした《I and You》シリーズの変遷を辿る本展で、土取の興味や心境の深まりを地続きに見ることができるでしょう。


左:I and You(“あたし、湖を見ているの、それとも眸を見ているの?”), 2022, キャンバスに油彩とスプレー, 910 × 727 mm
右:I and You (“Face, I know at last from whence you came!”), 2022, キャンバスに油彩, 410 × 318 mm

アーティスト
土取郁香
Fumika TSUCHITORI