waitingroomでは、2016年5月21日(土)から6月26日(日)まで、増村真実子の当ギャラリーでは約4年ぶり2回目となる個展『HIHU』を開催いたします。増村の作品は、漆と乾漆という日本の伝統的な素材・技法を踏襲しながら、現代的な感性でつくられたポップでどこか懐かしさのある造形が特徴です。また、今まで人型のオブジェを中心に制作してきた増村ですが、本展では植物を題材にした新作で新展開を見せております。壁掛けの大型作品、小立体作品、ドローイング数点で構成された、全て新作での発表となります。
1986年東京生まれ。祖父、父親がともに漆工芸作家という漆芸一家で育ちます。物心がついた頃から漆に触れていたという増村は、東京藝術大学にて漆芸を専攻し、2011年に当大学大学院美術研究科工芸専攻 漆芸を修了。在学中より、国内外のアートフェア、グループ展に精力的に参加してきました。近年の展覧会に、2015年グループ展『恋スル工芸展』(黒部市美術館/ 富山)、2014年グループ展『美の予感 -Metamorphose-』(髙島屋 / 東京・京都・大阪・名古屋)、2011-2013年までグループ展『シブヤスタイル Vol.5~8』(西武渋谷店美術画廊 / 東京)に連続出展、2012年個展『カサブタ』(waitingroom / 東京)が挙げられます。本展は、2012年のwaitingroomでの個展以来、約4年ぶりの個展となります。
左:《ハル》2015、漆、麻布、和紙、木(桧、桂)、顔料、11.0 x 14.0 x 37.0 cm
右:『恋スル工芸展』2015, 展覧会風景(黒部市美術館・富山)
本展では、増村がこれまで多く制作してきた未分化な存在の少年少女のモチーフから変化し、人の身体のフォルムを想起させる、丸みをおびた植物を題材にした新作を発表いたします。タイトル『HIHU』は、人の身体が皮膚によって形づくられているように、植物もまた皮膚と中身という共通の構造を持つものとして捉えたことに由来しました。また、漆芸一家に生まれた増村にとって植物とは、漆工芸作家である祖父、父親がともに題材に扱っていたものであり、幼い頃からずっと日常にあった漆もまた植物であるという、自身のルーツをたどるモチーフでもあります。
実制作でのカタチを追う作業は、モチーフが変化しても人型の作品を制作していたときの感覚の延長にあったと増村は語ります。麻布を漆で何枚も固めて形を作っていく乾漆技法では、半立体の作品の形を保たせることが非常に難しく、その繊細さが絶妙なバランスで皮膚を形づくり新たな造形を生み出します。とても薄く中は空洞なのに、膨らみや艶によって、まるで重たく中身があるように見える。そんな漆の魅力と、増村作品の滑らかで凛とした質感とがかけ合わさって、植物に人の姿を見る作家の世界観が強く反映された新作個展を、この機会に是非ご高覧ください。