WAITINGROOMは、2024年3月28日(木)–30日(土)に開催される『Art Basel Hong Kong 2024』のDiscoveries Sector(ブースNo.:#1C43)に、高田冬彦のソロプレゼンテーション『Cut Pieces』で出展いたします。
高田冬彦は、神話や伝説、おとぎ話といったファンタジーの世界を下敷きに、ユーモアに満ちた映像作品を制作しています。そのほとんどは、作家が実際に生活している自宅アパートの一室で撮影されており、映像に登場する小道具の多くは作家自ら手づくりしたものです。監督・撮影・ナレーション、そして出演までこなす高田は、権力、国家、ジェンダー、セクシュアリティにまつわる社会問題を、独特の手法で作り込まれた作品を通して、遊び心たっぷりに問いかけます。繊細で詩的な高田作品は、ときに私たちが生きる現実世界の様々な一面を垣間見せ、現代社会に対する私たちの理解を覆すかのようです。
Art Basel Hong Kong 2024でのソロプレゼンテーションでは、2023年9月のWAITINGROOMでの個展で発表した最新作『Cut Suits』(2023)と『The Butterfly Dream』(2022)を、アートフェアのブースの中に再構成し展示します。作中で実際に使用した小道具を展示するほか、作中のイメージが展示空間まで広がったようなインスタレーション的表現など、映像作品をより空間的に展示いたします。
『Cut Suits』2023年 installation view
アートバーゼル香港2024
——
プライベートビュー(招待者のみ)
First Choice | 3月26日(火)12:00-16:00
First Choice and Preview | 3月26日(火)16:00-20:00
First Choice and Preview | 3月27日(水)12:00-16:00
First Choice and Preview | 3月28日(木)12:00-14:00
First Choice and Preview | 3月29日(金)12:00-14:00
First Choice and Preview | 3月30日(土)11:00-13:00
ヴェルニサージュ
3月27日(水)16:00-20:00
一般公開日
3月28日(木)14:00-20:00
3月29日(金)14:00-20:00
3月30日(土)13:00-19:00
会場:香港コンベンション&エキシビションセンター(香港)
詳細:https://www.artbasel.com/hong-kong
ブース番号:1C43
——
作家・高田冬彦について
1987年広島県生まれ。2017年東京藝術大学大学院美術研究科油画研究領域 博士後期過程 修了。現在は千葉県を拠点に活動中。近年の主な展覧会に、2023年個展『Cut Pieces』(WAITINGROOM/東京)、2023年グループ展『Fairy Tales』(Queensland Art Gallery | Gallery of Modern Art/ブリスベン、オーストラリア)、2022年グループ展『Storymakers in Contemporary Japanese Art』(The Japan Foundation Sydney/シドニー、オーストラリア)、2020年グループ展『When It Waxes and Wanes』(VBKÖ/ウィーン、オーストリア)、2021年個展『LOVE PHANTOM 2』(WAITINGROOM/東京)、2019年個展『MAMスクリーン011: 高田冬彦』(森美術館/東京)、2018年個展『Dream Catcher』(Alternative Space CORE/広島)、2017年グループ展『MOTアニュアル2016 キセイノセイキ』(東京都現代美術館/東京)などが挙げられます。
展示作品について
『Art Basel Hong Kong 2024』でのソロプレゼンテーション『Cut Pieces』では、高田の最新作である《Cut Suits》(2023)と《The Butterfly Dream》(2022)という2つの映像作品に焦点を当て、インスタレーションと映像を展示します。
《The Butterfly Dream》(2022)は、主人公が蝶に変身する夢を見るという、中国の古典『荘子』のエピソード「胡蝶の夢」を詩的に引用した作品です。オノ・ヨーコの作品に倣い、高田は、蝶とハサミのキメラが、眠っている若者の衣服を切り裂きながら羽ばたく幻想的なシーンを創作しました。ハサミで切る/切られるさまは、権力と快楽の弁証法的な関係だけでなく、男性性そのものを取り巻く硬直した抑制をめぐる問題を提起していると言えます。
《Cut Suits》(2023)は、制度化された男性権力の表面的な装飾を文字通り「切り取る」ことで、この脱構築をさらに発展させた作品です。この作品では、ビジネススーツに身を包んだ6人の男たちが、楽観的な音楽の中、互いのスーツやシャツ、ネクタイを、楽しそうにハサミで切り取っていきます。この非暴力的で気まぐれにさえ見える儀式は、高田作品に顕著に繰り返される、脱皮・孵化といった「解放」というテーマを彷彿とさせます。家父長制を解きほぐすことに伴う混乱と困難の記念碑として、この映像作品の登場人物の身体から切り離されたボロボロの衣服は、スクリーンの前に積み上げられ、脱皮した「男らしさ」の墓場のようにも見えます。
高田は、デュシャンの有名な “Cemetery of Uniforms and Liveries” を参照し、男らしさ・女らしさの象徴化とステレオタイプ化を表現しています。また、ミニマリストの彫刻家ロバート・モリスの活動も参照しながら、展示会場にちぎれた布を散乱させます。こうして作家は、満員電車に寿司詰めにされた姿がよく想像される通り、日本における男らしさの象徴とも捉えられる「サラリーマン」の姿をフェティシズム化することで、西洋美術と日本の現代アーティストとしてのアイデンティティを対話させています。異性愛規範と資本主義的父性性の運命を縛り付ける糸をいたずらに断ち切ることで、サラリーマンを人間化し、水面下に隠された無邪気な喜びを救い出します。
『Cut Suits』2023年(ビデオスチル)
『The Butterfly Dream』2022年(ビデオスチル)